エッセイ テレ上春インの徒然日々
こんにちは、諸君。また会いましたね。
テレ上春イン(テレかみ-はるイン)です。
前回のエッセイが思わぬ好評を得て*1、この度連載化、という運びとなりました。
まぁ、マンガの読み切りが人気で連載になるあのパターンですね。
そこはマンガと同じなんだけれども、エッセイはマンガとは違う。
一度書いてしまった内容を膨らませて書くのには限界があるので、前回までのクオリティを保てるかは自信がない。
なので、作家としてこんな事を言うのは気がひけるけれども、ハードルを低くしたうえで読んでいただきたい。
第二回「去年の今頃」
通算第二回、連載第一回にして恐縮なのですが、書くことがありません。
当然です。家にいるのですから。
別に、外に出なければ話題がないというわけではないのです。
家の中に居ても、たしかな観察眼さえあれば、面白いことの一つや二つは見つかるものです。
だというのにそれが見つからない。どうしたものだろう。
トイレで用を足しながら、そんな事を考えていました。
しかし、どうにもいい案が浮かばず、「やれやれ。これじゃどうしようもないな」と思った時です。
レバー引き、トイレの水を流した際に、便器の水が飛びました。
その水は僕の手の中に飛び込んできて、その時、水と一緒に何かが降ってきました。
そしてふと、思ったのです。
「そうだ、去年のことを書こう」
それは、啓司というか、天啓というか、そういうものでした。
すぐに僕は写真フォルダをあさり、去年の写真を見つけました。
去年の僕はすごかった。
毎日のように原宿に行き、アクセサリーの類を買いあさり、大通りを闊歩していましたから。
みなとみらいにも行きました。
ええ。もちろん、女の子と一緒にね。ええ。
え? その子とのその後ですか?
その日から既読無視されてます笑 ええ。
レポート書いてみたり。
体を“ゲームセンターの匂い”で染め上げたり。
本来、インドア派な僕ですが、案外、外に出てたみたいです。
夏って本来そういうものなのかもしれませんね。
僕は四季の中で最も好きなのは冬です。(虫がいないのと、汗をかかなくて済むので)
しかし、こうして振り返ると、夏というのも決してつまらないものではなかったと思います。
ですが、今年はどうでしょう。
コロナウィルスの関係で、世界中の予定が一気に狂っていますよね。
インドアな僕としては、常に家にいられるのは歓迎するところなのですが、さすがにいつまでもこうだと、おちおちカードショップにも行けません。
来年はどんな年になるのでしょう。
「去年はマジ最高だったよなw 一年中、家ん中に居たもんw」と言えるような年になるのでしょうか。
それとも「去年は大変だったよな。まさか、日本に住んでいられなくなるなんてさ……」と言うような年になるのでしょうか。
未来は誰にも見えない。だからこそ、どうなるかはわからない。
最後まで諦めるな、希望を捨てるな、という言葉にも思えますが、そんな言葉の一体何が慰めになるでしょう。
著者情報
テレ上春イン
早稲田大学の隣、バカ田大学(現在は閉校)スケベ学部卒。フリーター。
作家・村上春樹のモノマネ芸が、SNSで話題になる。その後、小説「スウェーデンの森」を出版社に持ち込むが、却下される。
Amazonにて自費出版し、1冊500円税込で販売したところ、累計売上500円を達成するという不名誉な快挙を遂げる。(しかもその500円も村上春樹と間違えて買った人のものである)現在は販売中止。消費者庁からは、ブラックリストとしてマークされている。
夕日出版、本社ビルにて
「安田さん」
「ん? ああ! テレ上さん!」
「どうも。今月の原稿、上がりましたんで。持ってきました」
「それはそれは、ありがとうございます!」
「いやぁ、例には及びませんよ。お宅の売り上げに、僕が少しでも貢献できれば……それ以上に嬉しいことはありません」
「いや、ホントにありがとうございますぅ〜。テレ上さんのエッセイ、とても評判ですよぉ〜。おかげさまで売り上げも爆上がり!」
「ハハハ。そうですか。ま、読者ってのはみんなバカばっかりですからね。俺があのエッセイ通りの人間だと思い込んでやがる。実際の俺は、ファンの女を抱きまくり、ファンからの贈り物を質屋に入れ、ファンを馬鹿にして生きてるってのによぉ……」
「でも、そのおかげで私たち得してますもんね!」
「フッ……。騙される方より、騙す方がよっぽどツライですな。なんせ、ヤツらは騙されてることに気付けない愚か者なんだから」
「さすが、人気者はシビアですね!」
「商売上手と言ってくださいよ」
「ハハハ。お忙しいとは思いますが、ぜひまた、よろしくお願いします!」
「いやはや、人気作家もツライものですな。それじゃ、また来月持ってきますんで。よろしくお願いします」
「はい! ありがとうございました〜!」
「……行ったか。ったく。アポも取ってねえくせに来んじゃねえよクソゴミ底辺ドブ作家が……」
「安田さ〜ん」
「ん? ああ、斎藤か」
「大変っすねー。あんな底辺作家の相手しなきゃいけないなんて」
「しょうがねえだろ。仕事なんだからよ。てかなんだよ斎藤。なんか用でもあんのか?」
「ああ、そうだった。連絡入れてた例のコラムニスト、OK出ました。ウチで連載してくれるそうです」
「マジか! よっしゃ! じゃあ早速電話繋いでくれ。打ち合わせの日程決めてくる」
「でもどうするんすか? コラム載せる枠とか空いてましたっけ?」
「バカだな。これから空けるんだよ。そのためのキワモノエッセイだろうが……」
「ああ。なるほど」
「ああ。んじゃ行ってくる」
「悪りぃな、テレ上。面白くないヤツは誌面にいらねえんだわ。“騙されてることにも気づかないバカ”は……果たして誰なんだろうなぁ?」
騙しているのは誰か……
騙されているのは誰か……
その答えは、ページの外側に……
*1:実際のところ、そんなエッセイは書いてないし好評も貰ってませんが、貰ったという体でよろしくお願いします。